皆さんこんにちは。千葉県千葉市を拠点に消防用設備の点検・保守、工事を手掛ける有限会社新田防災です。
2月に、トイレの中でライターを点火し、火災報知器を誤作動させた動画が拡散されました。世間ではこの危険な行為に対する非難が殺到しています。
この記事では、ガスライターによって火災報知機を誤作動させる危険性について解説していきます。
■ライター点火による誤作動はどんな問題がおきたの?
最初に、ライター点火による火災報知器の誤作動事件がどのようなものだったか、少し振り返ってみましょう。
とある店舗に設置されたトイレの中で、女性がライターをつけ、火災報知器を故意に作動させました。ライターを一度つけた段階では、火災報知器は鳴らず、女性と同じ場所にいた動画の撮影者がさらにライターを付けるよう煽っていたのです。そして、火災報知器が鳴った時には、あろうことか大笑いをしていました。
この事件では、火災報知器の作動を受けて、警備員がトイレに駆けつけました。火災には至らなかったものの、一歩間違えれば大惨事につながった可能性もあります。火気厳禁であるはずの店舗内トイレで、火災報知器をわざと作動させたことは、決して許される行為ではありません。
■火災報知器の仕組み
火災報知器は、店舗以外にも住宅やオフィスなどさまざまな場所に設置されています。普段は、報知器の存在を意識しない人も多いのですが、万が一の事態が起こったときのために設置しなくてはなりません。まずは、火災報知器の役割や仕組みをしっかりと理解しておくことが必要です。
〇火災報知器の役割とは
火災報知器には、主に人命保護・被害抑制・炎症防止という役割を持っています。それぞれの役割について、詳しく解説します。
・人命を保護する
火災報知器が鳴ると、近辺にいる人たちに火災発生を知らせ、避難を促すことができます。避難ができれば、人命にかかわる危険を少しでも回避できるようになります。
建築物に燃えにくい工夫がされているとはいえ、火災発生に気づかないと逃げ遅れを引き起こすのです。実際に、火災発生時の逃げ遅れが原因で亡くなった方も多く、火災が発生した初期の段階での避難が、人命保護につながります。
平成16年に消防法が改正された際、自宅用火災警報器の設置義務が盛り込まれましたが、これは逃げ遅れの防止が大きな目的でした。現在では、全ての市町村で火災警報器を住宅に設置することが義務付けられています。店舗に設置する火災報知器も、火災警報器と同じように火災を知らせるものであるため、設置により逃げ遅れ防止の効果が高まり、人命保護の役割を果たします。
・火災発生時の被害を抑える
火災発生時に、できるだけ早く119番通報をすることで被害拡大を防ぐためにも、火災報知器が有効です。
一部の大型建物に設置されている自動火災報知設備の中には、火災が発生すると受信機へ信号が送られ、119番や警報会社への通報・オートロック解除・エレベーター停止などの機能が働くものもあります。これらの機能も、被害拡大を防ぐ有効な手段です。
・周囲への延焼を防ぐ
建物の周囲には、家やビルなどさまざまな建物が建っています。火災が発生すると、周囲の建物に延焼が起こる可能性もあります。延焼を防ぐために、建物の構造面で防火対策も行われていますが、やはり一刻も早く消火活動を始めることが大切です。
消火活動は、出火に気づいて初めて実施できるものであり、出火を知るには火災報知器が必須です。出火を知った段階で消火活動を始め、周囲への延焼を防ぐには、火災報知器の存在が必要不可欠なのです。
〇火災報知機の仕組みと特徴
火災報知器は、およそ10年が製品寿命となっており、煙・熱のいずれかで火災を感知します。それぞれの仕組みと特徴をみてみましょう。
・煙感知式報知器
煙を感知するタイプの火災報知器は、報知器が煙に反応することで火災発生を知らせる仕組みです。
煙感知式報知器のうち、光電式スポット型感知器は、発光部から出る光と煙の粒子が当たると乱反射が起き、センサーが反応するタイプです。光電式分離型感知器は、送光部と受光部の感知器間に煙が入ることで反応するタイプです。
・熱感知式報知器
熱感知式報知器は、最初に紹介した誤作動事件で注目を浴びたタイプの報知器です。一定の温度に達するとセンサーが熱に反応し、警報音を発します。
感知器内部の空気の温度が上昇すると作動するタイプは、差動式スポット型感知器と呼ばれます。一方、報知器を設置した場所の周囲の温度が一定温度に達すると反応する報知器は、定温式スポット型感知器と言います。
・電池式と電気式
火災報知器は、検知する方法のほかにも、電源によって2種類に分かれます。電池式は、報知器本体に電池をセットするため、設置時の電気工事は不要です。ただし、定期的に電池を交換しなくてはなりません。
電気式は、照明器具や家電と同じように家庭用電源で作動します。電池交換は不要ですが、設置時に電気工事が必要です。
■故意のガスライターによる消防設備誤作動の注意点
ガスライターを遊びで使用し、故意に消防設備の誤作動を引き起こすと、当事者や周囲に危険が及びます。それだけでなく、場合によっては罪に問われたり損害賠償を請求されたりする可能性もあるのです。一体どういうことなのか、さらに詳しくご説明します。
〇ガスライター使用がもたらす危険性とは
ガスライターの燃料は、プロパンガスやブタンガスなどです。本来の目的以外で使用すると、以下のような危険性が高まります。
・酸素欠乏
故意に燃料を吸引すると、急激な酸欠を起こしてしまいます。さらに症状が進行すると、呼吸停止もしくは死に至る可能性もあるほどです。
・引火や爆発
プロパンガスやブタンガスは、いずれも引火性が高いガスです。密室での使用で引火や爆発が発生し、当事者や第三者が大ケガをする恐れがあります。
・麻酔作用
ガスを吸引すると、麻酔作用により脳の働きが麻痺し、酩酊状態に陥ることもあります。幻聴・幻覚・妄想などが起こるほか、激しい興奮状態を引き起こすケースも多数見られます。
〇故意による火災報知器誤作動はどのような罪になるの?
故意に火災報知器を誤作動させると、威力業務妨害の罪に問われる可能性があります。威力業務妨害の「威力」とは、身体や生命が危険な状態に犯されることを含みます。いたずらよりも悪質性が高いと、威力に該当すると考えるのが一般的です。
また、店舗の火災報知器が作動すると、一定時間営業が停止します。これは営業妨害となり、損害賠償を請求される可能性もあります。本人は軽い気持ちでやったつもりであっても、重大な罪となるのです。
威力業務妨害は、軽微な内容であれば罰金刑もしくは執行猶予付きの判決も望めるかもしれません。しかし、被害が大きくなると、実刑判決を免れない可能性も十分にあります。
■消防設備へのいたずらは厳禁です!
火災報知器をはじめとする消防設備に対して、いたずらをするのはもちろん厳禁です。火災報知器が鳴った瞬間は、本当の火災なのかいたずらかは判断できません。いたずらだったとわかると、多くの人に迷惑をかけると心得ておかなくてはなりません。
最も怖いのは、いざという時に火災報知器が威力を発揮しないことです。イソップ童話のひとつである「嘘をつく子供」は、オオカミが来たと嘘をつき続けたために、本当にオオカミが来てしまった時に誰も信じなかったと言うお話ですが、火災報知器でも似たケースが想定されます。火災報知器が鳴っても、本当の火災だと思わず、誤作動やいたずらだと思う人もいるかも知れません。
さらに、火災報知器に対するいたずらがあまりにも多くなると、管理側が発信機を鳴らないようにしたり、配線を外したりして報知器を止めてしまうのです。この状態では、火災発生を周囲に知らせたくとも報知器が使えなくなってしまいます。最悪の場合、人命に関わるケースが起きるかも知れません。
火災報知器が正常に作動しない「消防不備」の状態で、火災による被害が発生すると、管理者側の責任として罪に問われる恐れもあります。消防法の中で、消防設備をみだりに使用・損壊・撤去してはいけないとの規定があり、損壊させると5年以下の懲役が科せられます。
いたずらをする人物は、ほんの軽い気持ちで行なってしまうでしょう。しかし、消防設備にいたずらをすると、周囲に大きな迷惑がかかるだけでなく、いたずらをした本人が罰則を受ける結果を招くのです。人命を守るための火災報知器にいたずらができないよう、設置場所の管理者は十分な対策をしておく必要があります。
千葉県千葉市の新田防災では、大小問わず建物の消防用設備の点検・保守を行っております。ビルオーナー様や管理組合の立場から、消防用設備設置のアドバイスを行うほか、その後の点検もお引き受けいたします。弊社は豊富な実績があり、施設の用途や規模に応じた正確な施工が可能です。さらに、各種申請の代行もお任せいただけます。
消防設備は、消防法によって定期的な点検が定められています。点検の時期を迎えたが、どのような手続きをすればいいのか分からない・自動火災報知設備の設置に迷っている・火災報知器の使用期限を迎えたので交換したいなど、消防用設備の設置・追加・点検・修理が必要な時は、お気軽に消防設備のプロである新田防災までご相談ください。皆様からのお問い合わせをぜひお待ちしております。
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