マンションの間取り変更時にも、自動火災報知設備の見直しが必要です! 理由とポイントを解説

皆さま、こんにちは。

千葉県千葉市を拠点に消防用設備の点検・保守、工事を手掛ける有限会社新田防災です。


入居率アップなどのため、賃貸マンションのリフォーム・リノベーションを行って間取りを変える場合、必ず意識しなければならないのが消防法です。消防法をしっかりと守らなければ、万が一火災が発生した時に被害が拡大しかねません。


特に重要なのが、自動火災報知設備(自火報)の見直しです。マンションは住戸内も含め、自火報の感知器を適切な場所に設置する義務があり、間取り変更に合わせて移設・増設しなければならない場合があります。ここでは自動火災報知設備の重要性や、感知器を設置すべき場所について解説します。




■マンションには自動火災報知設備の設置・点検・報告義務があります



現在は消防法により、あらゆる住宅への「住宅用火災警報器(住警器)」の設置が義務付けられています。2006年6月1日の改正消防法施行により、まずは新築住宅への設置が義務化。その後は猶予期間を経て、2011年からは既存住宅を含むすべての住宅で設置が義務化されました。もちろん、マンションやアパートといった共同住宅も対象です。


ただしこの義務は、自動火災報知設備(の感知器)が設置されている場所については免除されます。そのため賃貸マンションでは、基本的に自火報の設置で対応することになるでしょう。住警器がその場で音声・ブザーを鳴らす機能しかないのに対し、自火報は管理人室等の受信機に火災発生を知らせる機能もあるのが大きな違いです。


また、マンションやアパートといった共同住宅では、定期的に消防用設備点検(消防点検)が行われます。消防用設備点検とは、各種消防用設備が適切に設置されているか、そして正常に作動するかを確認するための点検です。もちろん自火報も点検対象となっており、専門業者に依頼して検査をしてもらいます。


この消防用設備点検には、大きく分けて「総合点検」と「機器点検」の2種類があります。それぞれの簡単な内容は以下の通りです。



・機器点検



消防用設備が適切に設置されているか、損傷はないかといったことを目視で確認し、簡単な操作で作動を確認する点検です。半年に1回実施されます。



・総合点検



機器点検の内容に加え、消防用設備を基準に従って作動させ、総合的な機能を確認する点検です。年に1回実施されます。


マンション・アパートのオーナーや管理会社は、消防用設備点検を適切に実施し、その結果を所轄の消防署に報告する義務があります。違反すると罰則もありえるため、ほとんどの対象物件では適切に検査を行っているでしょう。そのため、「今回も特に変わりはないだろうな」と考えることも多いかもしれません。


ところが、落とし穴になりやすい要素がひとつあります。それは、老朽化への対応や入居率アップなどを目的とした、マンションのリフォーム・リノベーションです。詳しくは次の項目で解説します。




■間取り変更時には、自火報の感知器の移設・増設を適切に行いましょう



自火報の感知器の設置場所は住警器に準じており、各市町村の条例によって定められています。具体的には寝室、リビング、ダイニング、キッチン、階段などです。新築時および前回の消防点検の直後は、これらの場所に問題なく感知器が設置されているでしょう。


しかし、マンションの間取り変更を行えば、部屋の用途が変わったり部屋が新しくできたりします。そうなれば当然、自火報の感知器も間取りに合わせて移設・増設しなければなりません。この対応を忘れてしまうケースが非常に多いのです。オーナー様や管理会社様はもちろんですが、リフォーム会社も理解していないことがよくあります。


中には、「義務なのはわかったが、そこまで細かく対応する必要性を感じない」「火災が発生したら感知器が鳴らなくても気づけるのでは?」と疑問に感じる方もいると思われます。しかし、これは大きな間違いです。


確かに火災が発生した時は、煙や炎を実際に見たり、熱気・物が焼ける臭い・パチパチという音を感じたりして気づくことが多いでしょう。しかし、火元から離れた部屋にいる時や閉め切った部屋にいる時、そして就寝中などは、火災に気づくのが遅れてしまいます。結果として被害の拡大を招き、最悪の場合は逃げ遅れて命を落としてしまうのです。


その点、感知器が適切に設置されていれば、火災の煙や熱を感知しブザーや音声によって知らせてくれるため、たとえ就寝中でも火災の発生に気づくことができます。まだ火が小さければ初期消火が間に合う可能性もありますし、外に逃げて命を守ったり、消防車を呼んだりすることもできるでしょう。


特にマンションの感知器は、戸建住宅用の住警器と異なり、火災の発生を管理人室等の受信機に知らせるという重要な役割があります。たとえ入居者が火災の発生に気づいていなくても、管理人が即座に動くことができれば迅速な対応を取れます。いずれにしても、火災の被害を最小限に抑えられるのです。


事実として、住宅用火災警報器の効果は統計にも表れています。東京消防庁のデータによれば、住宅用火災警報器の設置義務化以降、住宅火災の発生件数や火災による死者数は明らかに減少。さらに総務省消防庁の統計では、住警器があると火災による焼損面積や死者数がほぼ半減し、損害額も約4割減少していることが判明しているのです。


したがって、マンションで間取り変更を行った時は、自火報の感知器の見直しも必ず行い、適切な場所に移設・増設すべきだといえます。もちろん、次回の消防用設備点検をクリアするという意味でも重要です。火災発生時に入居者の命や財産を守るためにも、自火報の設置と点検をしっかりと行いましょう。




■自動火災報知設備の設置はオーナーの義務です!



住宅における火災警報器の設置義務は、その家の持ち主にあります。これを賃貸マンションに当てはめると、自動火災報知設備の設置・点検・報告の義務は、オーナーにあるということです。間取り変更時の感知器の移設・増設を怠り、結果として火災の被害を拡大させてしまった場合は、オーナーが責任を問われることになります。


また、感知器は適当に設置しておけばいいわけではありません。一口に感知器といっても、大きく分けて煙を感知するものと熱を感知するものがあり、その仕組みや形状にもいくつかの種類があります。これらを適切に使い分けた上で、市町村の条例で定められた場所に間違いなく設置しなければならないのです。


現実には、住警器や自火報が適切に設置されている割合は、決して高いとはいえません。統計によると、条例を完全に守って住警器や自火報を設置している割合(条例適合率)は、令和3年6月1日の時点で68.0%です。つまり30%強の住宅には、何かしらの不備があるということになります。そもそも、全国の設置率自体が83.1%であり、約17%の住宅はまったく設置していないのです。


賃貸マンションの場合は消防用設備点検と報告の義務があるため、自火報を設置していないというケースはまずないと思われます。しかし、間取り変更に合わせた移設・増設をしていないケースは、弊社の経験からいっても珍しくありません。


人命にも関わる問題ですから、「知らなかった」では済まされない話です。安心して住めるマンションを作るためにも、リフォームで間取り変更をした時は条例を確認し、状況に応じて感知器の移設・増設を行う必要があります。正確な工事のためにも、まずは自動火災報知設備に詳しい専門業者に相談してみましょう。



千葉県千葉市の新田防災では、大小問わず建物の消防用設備の点検・保守を行っております。マンションへの自動火災報知設備の設置やその後の点検も豊富な実績があり、施設の用途や規模に応じた正確な施工が可能です。さらに、各種申請の代行もお任せいただけます。消防用設備の設置・追加・点検が必要な時は、お気軽に新田防災までご相談ください。


                          2022年10月時点