皆さんこんにちは。
千葉県千葉市を拠点に消防用設備の点検・保守、工事を手掛ける有限会社新田防災です。
火災発生時の初期消火に使われる「消火器」は、ビルや店舗など多くの建物に設置されています。緊急時以外は使う機会がないため、どれも同じに見えるかもしれません。しかし実のところ、消火器は消火の仕組みや設置場所によっていくつかの種類に分けられ、さらには点検・交換も必要なのです。今回は、普段何気なく見ている消火器の知識を詳しくご紹介します。
■消火器とは
消火器とは、人が操作して火災の初期消火を行うための消防用設備です。金属製の本体の中に「消火剤」が入っており、安全栓を抜いてホースの先端のノズルを火元に向け、上部のレバーを強く握ることで消火剤を放射します。火災を初期段階で食い止めることを目的に、ビル・学校・病院・商業施設など多くの場所に設置されているため、ほとんどの方は見たことがあるでしょう。
消火剤にはいろいろな種類があり、それぞれ特徴が異なります。また、火災には「普通火災」「油火災」「電気火災」といった種類があり、火災の種類に適した消火剤を用いなければなりません。そのため消火器にも、適応火災の表示義務があります。その他、消火剤の放射方式や設置場所によっても、いくつかの種類に分類されています。
■加圧式と蓄圧式の違い
消火器は、消火剤に圧力をかけて勢いよく放射します。この圧力のかけ方によって、「加圧式」と「蓄圧式」に大きく分けられます。2つの方式の違いを見ていきましょう。
・加圧式
加圧式は、消火器の内部に小型のガスボンベを搭載し、ガスの圧力で消火剤を放射する方式です。レバーを握るとボンベに穴が開き、放出されたガスが導入管を通って消火剤を押し出します。この性質上、使用時には消火器本体内部の圧力が急激に高まるので、本体容器にサビ・へこみ・経年劣化などがある場合は、破裂してしまうリスクが少なからずあります。
・蓄圧式
蓄圧式は、消火器本体の内部にあらかじめガス(主に窒素)を封入しておき、ガスと一緒に消火剤を放射する方式です。普段はガスの圧力を放出弁(バルブ)で押さえた状態になっており、レバーを握ると放出弁が開放され、封入されているガスと消火剤が放出されます。
つまり、最初から安全な圧力でガスを封入してあり、使用時に内部の圧力が一気に高まることはないので、加圧式のような破裂のリスクはありません。そのため、最近の消火器は蓄圧式が主流になっています。
■住宅用消火器と業務用消火器の違い
消火器には、一般住宅に設置可能な「住宅用(家庭用)消火器」と、ビル・学校・病院・商業施設などに設置される「業務用消火器」があります。2種類の消火器の特徴と違いを確認しておきましょう。
・住宅用消火器
住宅用消火器は、その名の通り一般住宅向けに作られている消火器です。一般家庭で多い天ぷら油火災やストーブ火災に対応しており、適応火災は絵で示されています。消火剤は粉末タイプと強化液タイプが両方ありますが、どちらかというと強化液タイプの方が製品数が豊富です。
コンパクトで軽量なため、女性や高齢者でも簡単に操作でき、ホースがない製品もあります。加えて、本体容器の色の規制がないので、おしゃれなデザインのものが多く、室内の雰囲気を損ねないのがメリットです。
ただし、消火器の設置義務がある建物(オフィスビルや飲食店、学校など)に設置することはできません。また、耐用年数(寿命)は5年程度で、薬剤の詰め替えができないため、使用期限が来たら本体ごと交換する必要があります。
なお、住宅用消火器には設置義務がなく、法定点検の義務もありません(定期点検は説明書に沿って自分で行う)。中には専門業者を装い、消火器を強引に売りつけたり、法外な点検料を請求したりする悪徳業者もいるためご注意ください。
・業務用消火器
業務用消火器は、オフィスビル・学校・病院・商業施設といった、消火器の設置義務がある施設(一定の防火対象物)に置くことができる消火器です。住宅用消火器に比べて消火能力や使用範囲が優れている他、容器の25%以上を赤色にするよう規制されています。消火器と聞いた時、多くの方は業務用消火器を思い浮かべるでしょう。
最も多く流通しているのは「10型粉末消火器」というタイプで、迷ったらこれを選んでおけば問題ありません。消火性能が抜群で多用途に使用できますが、掃除が大変なのがデメリットです。また、「3型強化液消火器」もよく使われており、消火性能は粉末型に劣りますが、液体のため楽に掃除ができます。
なお、業務用消火器は住宅用消火器とは異なり、6ヶ月に1回法定点検を実施する義務があります。加圧式は製造から3年以内、蓄圧式は5年以内であれば自分で点検を行うこともできますが、その期間を超えた場合は点検資格者に点検を依頼するか、新しいものに買い替えなければなりません。耐用年数は10年で、薬剤の詰め替えが可能です。
■消火器の種類
消火器は、使用する消火剤によってもさまざまな種類に分けられます。迅速・確実な消火という観点では、最も重要なポイントです。主な消火器の種類をご紹介します。
・水消火器
純水ベースの消火剤を使用し、冷却することで消火する消火器です。純水は乾燥後に不純物を残さず、不導体なので電気も通しません。そのため、清潔さが求められる場所や、電気機器が設置されている場所でも使えるのがメリットです。主にオフィス、サーバールーム、クリーンルーム、飲食店の厨房など、消火活動による汚染を避けたい場所に設置されます。
・強化液消火器
消火剤のベースである界面活性剤に、浸潤剤などの添加物を混合して消火能力を上げた消火器です。水系なので消火剤を霧状に噴霧でき、電気火災にも使えます。かつては強アルカリ性の消火剤が使われていましたが、現在は中性が主流となり使い勝手がよくなりました。
・粉末消火器
ピンク色で粉状の消火剤を放射する消火器です。熱で消火剤が溶けて飴状になり、火災を覆うことで沈下します。消火剤の主成分はリン酸アンモニウムで、さまざまな火災に対応しており、消火器のシェアの90%以上をこのタイプが占めています。ただし、使用後は現場がピンク色の粉まみれになってしまうため、復旧が大変なのがデメリットです。
・泡消火器
泡によって火災を覆い、消火するタイプの消火器です。薬剤を混ぜ合わせ化学反応を起こして泡を放射する「化学泡消火器」と、専用のノズルで消火剤を泡状にして放射する「機械泡消火器」の2種類があります。油火災に対しては絶大な威力を発揮するため、灯油タンクなどの危険物施設ではよく使われますが、泡は電気を通すため電気火災には使用できません。
・二酸化炭素消火器
二酸化炭素を放出し、窒息効果によって消火するタイプの消火器です。気体による消火のため現場を汚染するリスクが低く、美術館や電気室、サーバールームなどでよく使われます。ただし、人間も窒息してしまうため密室や地下室では使用厳禁です。基本的に普通火災には対応しておらず、油火災や電気火災に使われます。
■注意! 消火器には使用期限があります
消火器を設置する場合は、住宅でもそれ以外の施設でも注意しなければならない点があります。それは、先に少し触れた通り、消火器にも「使用期限」があるということです。
消火器は基本的に頑丈なものですが、それでも経年劣化は避けられません。使用期限を過ぎた消火器は、破裂による事故のリスクがあります。また、十分に消火剤を放射できず、いざという時に役に立たないかもしれません。そのため、使用期限が近い消火器は、早めに交換する必要があるのです。
使用期限は材質や安全率などを基に決められており、消火器本体に表示されています。業務用消火器はおおむね10年、住宅用消火器はおおむね5年です。住宅用消火器は薬剤の詰め替えができないため、使用期限を過ぎたら消火器自体を買い換える必要があります。
加えて、消火器に腐食・キズ・変形などが見られる場合は、使用期限に関係なく速やかに交換しなければなりません。定期点検の結果、使用期限切れや容器の破損が判明した場合は、すぐに専門の業者に連絡するのがおすすめです。消火器を確実に使えるようにしておき、火災の被害を最小限に食い止めましょう!
千葉県千葉市の新田防災では、大小問わず建物の消防用設備の点検・保守を行っております。消火器の設置や点検の実績も豊富で、施設の用途や規模に応じた正確な施工が可能です。さらに、各種申請の代行もお任せいただけます。消防用設備の設置・追加・点検が必要な時は、お気軽に新田防災までご相談ください。