連結送水管の耐圧性能点検は法律で義務付けられています! 点検の内容と重要性をプロが徹底解説

皆さま、こんにちは。

千葉県千葉市を拠点に消防用設備の点検・保守、工事を手掛ける有限会社新田防災です。


火災が発生した時は、消防隊が駆けつけて消火活動を行ってくれます。しかし、建物の規模や構造によっては、消防車による外からの放水だけでは火を消すことができません。


その場合は、建物に設置された「連結送水管」を使い、火災が発生している箇所に的確に放水できるようにします。当然、いざという時に正常に稼働しなければ意味がないため、連結送水管には定期的な耐圧点検が義務付けられているのです。今回は、連結送水管の役割や設置基準、連結送水管耐圧点検の内容について解説します。




■連結送水管って何のためにあるの?



連結送水管とは、消防隊の消火活動に使われる消防用設備(消火活動上必要な施設)のひとつです。建物の内部を通る配管設備や、地上に設置されている送水口、各階に設置されている放水口、そして放水用器具の収納箱などで構成されています。火災発生時は送水口に消防ポンプ車のホースを接続し、配管を通じて消防用水を各階に送り届け、放水口にホースを接続して消火活動を行うという仕組みです。


主な設置場所は高層ビルや地下街といった、大規模で構造が複雑な建物です。こういった建物で火災が発生すると、消防車などによって外部から注水するだけでは、建物内部の十分な消火活動ができません。かといって、消防車から直接ホースを延長し、建物内部に入って消火するのにも限界があります。


そこで活用されるのが連結送水管です。連結送水管があれば、たとえ巨大で複雑な形状の建物でも、大量の消防用水を各階へスムーズに届けることができます。結果として、火災が発生している箇所で効率よく消火活動を行うことができ、大切な命や財産を守ることにつながるのです。




■連結送水管を設置する必要があるのはどんな建物?



連結送水管の設置対象や設置基準は、消防法施行令第29条によって定められています。設置対象となる建物の条件をわかりやすくまとめると、以下のようになります。


1:地上7階以上

2:地上5階以上で延べ面積が6000㎡以上

3:地下街で延べ面積が1000㎡以上

4:道路の用に供する部分(駐車場など)がある建築物

5:延長50m以上のアーケード


高層ビルやマンション、宿泊施設、病院、学校、駅、工場、地下街、商店街のアーケードといった「防火対象物」において、以上の条件に1つでも当てはまるなら、連結送水管を設置する義務が生じます。また、送水口と放水口は、それぞれ以下のような設置基準が定められています。



・送水口



送水口は、消防ポンプ自動車が容易に接近できる位置に設けることが第一です。また、形状は双口形、つまりホースの接続口を2つ設ける必要があります。さらに、接続口は地盤面からの高さが500mm以上・1000mm以下の位置に設けるとともに、見やすい箇所に標識を設けなければなりません。



・放水口



放水口を設置すべき階層は建築物の3階以上、または地階(地下)です。設置する場所は、消防隊が有効に消火活動を行える位置である必要があります。階段室や非常エレベーターの乗降ロビーなどが適しているでしょう。その階の各部分から放水口までの水平距離は50m以下、アーケードでは25m以下である必要があるため、設置場所は正確に決めなければなりません。


また、送水口と同じく見やすい箇所に標識を設け、ホース接続口は床面からの高さが500mm以上・1000mm以下の位置にする必要があります。加えて、11階以上の部分に設ける放水口は双口形とし、放水用器具を格納した箱の設置も求められます。


なお、配管は消火活動専用とする必要があります。ただし、性能に支障を生じないのであれば、屋内消火栓などとの兼用でも構いません。




■連結送水管は点検・報告の義務があります!



連結送水管は、ただ水が流れればいいわけではありません。消火活動には大量の水を必要とし、それが勢いよく流れる配管内には相当な水圧がかかります。そのため、火災発生時に変形・漏水などの不具合なく使用できるよう、連結送水管および消防用ホースには「耐圧性能点検」が義務付けられているのです(消防法第17条3の3)。


点検の義務があるのは設置から10年が経過したもので、以降は3年ごとに点検を実施する必要があります。また、点検後は管轄の消防署に点検結果報告書を提出しなければなりません。点検の要領や結果の判断基準は、連結送水管と消防用ホースで異なるため、それぞれの内容を確認しておきましょう。



・連結送水管



送水口から動力消防ポンプ、またはそれと同等の試験を行うことができる機器を用いて送水し、締切静水圧を3分間かけて確認します。所定圧力をかけた結果、送水口本体・配管・接続部分・弁類等に、変形または著しい漏水がなければクリアです。



・消防用ホース



ホースの端末部に充水し、耐圧試験等により所定の水圧を5分間かけて確認します。その結果、変形・損傷または著しい漏水等がなければクリアです。


いずれの場合でも、点検中に減圧・漏水などの異常がみられるケースは決して珍しくありません。もしトラブルが発生したら、必要に応じて漏水箇所の確認・緊急排水・点検の中止などを行いましょう。もちろんその後は、原因を特定した上で設備を修繕・交換するべきです。


また、建物の用途や配管状況によっては、充水・加圧する際に著しく漏水し、建物が損害を受ける場合もあります。このような可能性が懸念される場合は、あらかじめ空気圧予備試験を行い、配管から空気漏れしないことを確認してください。さらに、連結送水管が屋内消火栓と兼用配管であるなら、水損などのリスクを低減するため、送水口から直近の仕切弁までの区間耐圧を実施します。


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■連結送水管の耐圧性能点検の流れ



連結送水管には「乾式」と「湿式」があります。「乾式」は初めての耐圧試験や設置後から年数が経過している場合は、漏水事故回避のためにエアー試験を行い、漏れがないか確認してから充水させ耐圧試験を行います。

そのため、連結送水管の耐圧性能点検は、建物各所に設置箇所を点検しなければならないのに加え、ポンプ車の派遣が必須です。そこで最後に、耐圧性能点検をスムーズに進められるよう、点検の流れを確認しておきましょう。



1:事前準備



まずは専門業者に点検を申し込み、点検日程の調整や内容の確認といった打ち合わせを行います。現地調査もしてもらった上で見積もりを取り、問題がなければ試験実施になります。その後は施設内の整理整頓や、施設の居住者・利用者・従業員への事前告知といった準備を実施します。



2:訪問・確認



点検当日はポンプ車が駐車できるよう、あらかじめスペースを確保しておいてください。業者が到着したら、関係者様への挨拶や図面との照合、各設備の確認、作業計画や使用する機材・工具の確認、ご要望・留意点・心配な点の確認といった最終チェックを行います。



3:点検実施



安全を最優先しつつ、各所が連携を取りながら連結送水管耐圧性能点検を実施します。点検が終了したら、放水口のバルブや弁類、スイッチ類などを適正な状態に復旧し、後片付けを行います。業者から終了の報告を受けた段階で、点検は終了です。一定の耐圧性能が確認された設備には「耐圧性能点検済証」が発行(貼付)されます。



4:報告書の作成・提出



点検の結果をもとに報告書を作成し、所轄の消防署へ提出します。業者によっては作成・提出を代行してくれることもあります。設備の不備を指摘されたら、改善のための対応を取りましょう。



点検の結果、連結送水管や設置環境に問題があると判明した場合は、機器の交換や移設などの対応を取らなければなりません。不備を指摘されながら改善せず、消防署からの措置命令にも違反した場合は、建物のオーナー様・管理者様が罰金や拘留に処せられるおそれもあるため注意が必要です。


定期点検を欠かさずに行い、発見された不良箇所を改修すれば、火災発生時に連結送水管をスムーズに使用できるようになります。その結果、火災の被害が最小限に抑えられ、多くの人命や財産、建物が守られるのです。連結送水管がいざというときにきちんと作動するよう、信頼できる専門業者に点検を依頼しましょう!


千葉県千葉市の新田防災では、大小問わず建物の消防用設備の点検・保守を行っております。連結送水管設備の設置やその後の点検も豊富な実績があり、施設の用途や規模に応じた正確な施工が可能です。さらに、各種手続きの代行もお任せいただけます。消防用設備の設置・追加・点検が必要な時は、お気軽に新田防災までご相談ください。


                           2022年10月時点