皆さんこんにちは。
千葉県千葉市を拠点に消防用設備の点検・保守、工事を手掛けている有限会社新田防災です。
消防設備は、いざ火災が発生した時に安全な避難や初期消火に役立てるために欠かすことができない設備です。
特に幼児などは避難に時間がかかってしまうため、保育園や幼稚園などでは消防設備が重要な役割を担っているといえます。
したがって普段は使用することがなくても万が一火災が発生した際には、常に正常に稼働できるように定期的に点検を行っておく必要があります。
そこで今回は、消防設備点検の概要や消防設備点検が必要な建物、保育園での消防設備点検の重要性などについて紹介します。
■そもそも消防設備点検って何?
そもそも国内における消防用設備とは、消防法及び関係政令で規定する「消防の用に供する設備、消防用水及び消火活動上必要な施設」の総称です。
一般的に消火器・スプリンクラー設備・屋内消火栓設備などの消火設備、自動火災報知設備・ガス漏れ警報設備・漏電火災警報機などの警報設備、避難器具・誘導灯及び誘導標識などの避難設備に大別されます。
これらの設備によって建物火災の被害を最小限に抑えることができるようになります。
そのほかに建築基準法上で定められた防火扉や防火シャッターなどの防災設備があります。
防災設備には特に定義などはありませんが、消防用設備と防災設備はそれぞれ関係法令が異なるので、建築時には建築基準法と消防法及び市町村条例との整合性が問われることがあります。
しかし建物を運用する際には、防災設備として一括して管理されるのが一般的です。
そして消防用設備の設置が義務付けられているすべての建物や施設では、定期的な点検が必要になります。
消防用設備の定期点検は消防法第17条3-3で定められた義務で、建物に設置されている消防設備等を定期的に点検して、その結果を消防長または消防署長に報告しなければならないと定められています。
消防用設備は普段は使用する機会がないので、万が一経年劣化や故障等が発生していても気付きにくいものです。
したがっていざという時に正常に作動しなければ、人命に関わる大きな被害に繋がってしまうことにもなりかねません。
そうした事態になるのを未然に防ぐために外観の目視確認を行なったり、実際に操作を行って作動状態をチェックしたりするのが消防用設備の定期点検です。
正確に配置されているのか等の外観の確認を行う「機器点検」を6か月に1回行い、実際に作動させて正確に作動するかどうかを詳細に確認する「総合点検」を1年に1回(機器点検と同時に実施)行う必要があります。
消防用設備の点検については、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
「消防用設備点検って何? 点検の内容や費用、準備すべき書類を紹介」
https://nittabousai.co.jp/blog/column/144176
■消防用設備の点検が必要な建物とは?
消防用設備の設置や点検は、すべての建物に義務付けられているわけではありません。
消防用設備の設置・点検が義務付けられている建物のことを「防火対象物」といいますが、防火対象物はさらに「特定防火対象物」と「非特定防火対象物」に分類され、それぞれ次のようになります。
・特定防火対象物
「特定防火対象物」とは、万が一火災などが発生した場合に大きな被害が発生する恐れがあり、人命に被害を及ぼすリスクが高い建物のことをいいます。
大まかにいうと「不特定多数の人が利用する建物」をいい、劇場や映画館、集会場、百貨店、マーケット、ホテル、飲食店、遊技場、ダンスホール、カラオケボックスなどをいいます。
これらの建築物のうち、延べ床面積(各階の床面積を合計した面積)が1,000㎡以上のものが、消防設備士や消防設備点検資格者による消防用設備点検の対象になります。
また特定防火対象物に分類される建物には、特定の人が利用するのは決まっていても、病院や福祉施設、幼稚園、保育園、養護学校など、火災時の円滑な非難が困難であることが予想される建物も含まれています。
したがって特定防火対象物は特に安全性を高める必要があるため、消防設備の設置基準も厳しくなっていて、1年に1回の消防設備点検結果の報告が必要になります。
・非特定防火対象物
共同住宅や寄宿舎、工場、作業場、スタジオ、小中学校、高等学校、大学、専修学校、事務所などは多くの人が出入りする建物ですが、ほぼ同じ人が利用する建物になります。
このような建物を「非特定防火対象物」といいます。
特定防火対象物ではないものの、延べ床面積が1,000㎡以上で、消防長または消防署長が指定するものは、消防設備士や消防設備点検資格者による消防用設備点検の対象になります。
また神社や教会、図書館、博物館、美術館、駅、バスターミナルなどの不特定な人が利用する建物であっても避難がさほど困難でないと思われる場合は、非特定防火対象物に分類されています。
これらの建物では、3年に1回の消防設備点検結果の報告が必要となっています。
尚、特定防火対象物については「消防設備点検」のほかに、施設の規模や構造などによっては「防火対象物点検」も義務付けられています。
防火対象物点検とは防火管理体系の維持管理、火災予防における消防設備以外の点検のことで、災害が起こった場合にはどのように行動するのか、使用している火気設備の運用状況はどうかなどの項目を検査していきます。
■保育園では消防点検が必要
保育施設や福祉施設を利用する小さな子供や高齢者、障がい者の方は、「災害弱者」と呼ばれています。具体的には次のような方をいいます。
・心身に障がい者
肢体不自由、知的障がい、内部障がい、視覚聴覚障がいのある方
・高齢者
体力的な衰えや認知症が認められる方
・乳幼児
健常であっても理解力・判断力が乏しい方
・妊婦
行動に一時的な支障がある方
・外国人
日本語の理解が不十分な方
すなわち自分の身に危険が差し迫ってもそれを察知する能力が低い、察知しても適切な行動がとれないなどといった方をいいます。
そしてこれらの方が多く利用する建物・施設では、消防用設備の点検が非常に重要になります。
したがって消防法施行令では前述したように消防用設備等の点検・報告が必要になる特定防火対象物が定められており、避難に時間がかかる幼児が利用する保育園はその中のひとつになっていて(6項ハ)、1年に1回の点検結果報告が必要となっています。(ただし6か月に1回の機器点検と1年に1回の総合点検が必要)
ただし保育園で消防用設備の点検を行う際には、次の点に注意が必要になります。
・お昼寝の時間を避ける
13時~15時は子どものお昼寝の時間になるので、その時間に点検を行うのは避けましょう。
・点検棒が子どもに当たらないように注意する
火災報知器の検査の際には長さが最大で4メートル程度の試験棒を天井の感知器に当てて検査しますが、検査中に点検棒が子どもにあたって怪我をさせないように注意が必要です。
・自動火災報知機のベルを鳴らす時には事前に許可を得ておく
自動火災報知器のベルは消防法で90㏈以上と定められているため、検査でベルを鳴らす時にはとても大きな音が発生します。
そのため検査の際には子どもが音に驚いてしまうことがないように、事前に保育士の許可を得ておく必要があります。
また消防点検の費用には相場があるものの、相場よりも高額な費用を請求されてしまう事例もあります。
消防設備の点検業者には、悪質な業者も存在しているので注意が必要です。
事前にインターネットで業者を検索するか、消防署に相談してみることをおすすめします。(ただし消防署では点検を請け負っていません)
■消防用設備の点検・報告を怠ってしまった場合の罰則
消防用設備の点検の目的は火災発生時に人命や財産への被害を最小限に抑えるためのものなので、万が一点検や報告を怠ってしまった場合には、消防法第44条に基づき30万円以下の罰金または拘留という罰則が科されるようになります。
また次のような場合にも罰則の対象になるので、注意が必要です。
・無資格者による点検を行っていた
消防設備の点検は消防設備士または消防設備点検有資格者しか行うことができません。(それぞれで職務範囲が異なります)
無資格者による点検は無効になります。
・建物の全フロアの点検を行わなかった
点検の対象は「建物に設置されているすべての消防用設備等」になるので、建物の全フロアが点検の対象になります。
・事実と異なる虚偽の報告を行った
点検の結果は、点検結果報告書に事実を記載しなければなりません。
虚偽の報告は罰則の対象になります。
・必要な時期に点検を行わなかった
機器点検は1年に2回、総合点検は1年に1回実施することになっています。
■消防設備点検で不備があった場合には?
点検の結果、不備事項があった場合には早期に交換・改修を行う必要があります。
消防設備に不備があると火災等の発生時に被害が拡大する可能性があるので、できるだけ早く正常な状態に復旧することが大切です。
不備のあった報告書を消防署に提出する場合には、改修の予定を記載した「消防用設備等点検報告改修計画書」を合わせて消防署に提出します。
尚、主な消防設備の交換の目安は次のようになります。
・ガス漏れ警報器:5年ごと
・消火器:10年ごと
・煙式感知器、熱式感知器(半導体式):10年ごと
・熱式感知器、非常警報設備:15年ごと
・閉鎖型スプリンクラーヘッド、消火栓開閉弁:18~20年ごと
・発信機、受信機、防排煙設備連動操作盤:20年ごと
■まとめ
建築物の中には、消防用設備の設置や点検が政令で義務付けられているものがあります。
中でも保育園などで万が一火災が発生した際には避難に時間がかかってしまうので、子ども達の安全を確保するためにも常に消防設備が正常に稼働できるようにしておくことが不可欠です。
そのため必要な時期に消防設備の点検を行い、不備があった場合には早急に是正しておくことが大切です。
消防用設備等についての点検及び報告については消防法第17条の3の3で定められているので、これをしっかりと遵守することが建物の関係者(所有者・管理者・占有者)に義務付けられています。
千葉県千葉市の新田防災では、大小問わず建物の消防用設備の点検・保守を行っております。保育園や幼稚園などの施工実績も豊富にあり、管理者様・利用者様の目線でアドバイスができ、施設の用途や規模に応じた正確な施工が可能です。さらに、各種申請の代行もお任せいただけます。消防用設備の設置・追加・点検が必要な時は、お気軽に新田防災までご相談ください。
2023年8月時点