社会福祉施設の消防用設備点検は、立入検査前の早めのタイミングで実施を!

皆さんこんにちは。

千葉県千葉市を拠点に消防用設備の点検・保守、工事を手掛ける有限会社新田防災です。


火災発生時に生命や建物を守るためには、消防用設備の設置・点検が欠かせません。これはどのような施設でも同じですが、「社会福祉施設」では特に厳重にチェックする必要があります。なぜなら社会福祉施設は、「災害弱者」が多数利用しているからです。今回は、社会福祉施設における消防用設備点検の重要性について解説します。



■社会福祉施設ってどんな施設?



社会福祉施設とは、高齢者・障害者・子供といった、社会的支援を必要とする人たちに福祉サービスを提供する施設です。社会福祉施設では、利用者が自立して生活できるよう、日常生活のサポートや技術支援などを行っています。代表的な社会福祉施設を見ていきましょう。



・特別養護老人ホーム(特養、介護老人福祉施設)



在宅での生活が困難な、要介護の高齢者が入居する施設です。要介護 3 以上の人しか入居できないなど好条件が厳しいものの、公的な施設なので料金は安く設定されています。終身での利用が可能で、終の棲家になりえます。以前は入居待機者が多く入りにくい施設でしたが、2015 年からは入居の条件が厳しくなり、以前よりは多少入りやすくなりました。



・介護老人保健施設(老健)



医療的ケアやリハビリが必要な、要介護状態の高齢者が利用できる施設です。介護や看護、リハビリ、食事・入浴・排泄の介助といったサービスを受けられます。特別養護老人ホームとの違いは、あくまでも在宅復帰を目指すための施設だという点です。そのため基本的には、3 ヶ月~6 ヶ月程度の期間で退去する必要があります。



・介護療養型医療施設



比較的重度の要介護者が利用する施設です。他の施設に比べて看護師の配置数が多く、充実した医療処置やリハビリが受けられます。もちろん、食事や排泄の介助といった介護サービスも提供されますが、あくまでも「医療機関」であるため、回復期の寝たきり患者などの利用を想定しています。2018 年に設置された「介護医療院」への移行などを理由に、2024 年で廃止予定です。



・グループホーム



高齢者、障害者、親と同居できない子供などが、支援を受けながら集団生活を送るための施設です。日本では多くの場合、認知症の高齢者に特化した「認知症高齢者グループホーム」を指します。入居条件は認知症であることや、要支援 2 以上であることなどです。認知症の進行を遅らせることや、安定した心理状態で生活することなどを目的にして、入居者が家事分担を行います。



・デイサービス



日帰りで利用する通所介護サービスです。家族の介護の負担軽減をはじめ、利用者の孤立感の解消や心身機能の維持などを目的とし、利用者の自立した生活をサポートします。高齢者向けの施設の他、障害者向けの「地域活動支援センター」や、児童向けの「放課後等デイサービス」があります。




■社会福祉施設は、消防用設備点検が特に重要


社会福祉施設は、他の施設以上に消防用設備の設置・点検が重要になります。なぜなら、社会福祉施設の利用者の多くは「災害弱者」だからです。


災害弱者とは、災害発生時に自力で避難するのが難しく、避難に支援を必要とする人のことです。防災行政上は「要配慮者」といいます。平成 3 年度版の「防災白書」では、以下の条件に 1 つでも当てはまる人を防災弱者と定義しています。


①自分の身に危険が差し迫った場合、それを察知する能力がない、または困難な人

②自分の身に危険が差し迫った場合、それを察知しても適切な行動をとることができない、または困難な人

③危険を知らせる情報を受けることができない、または困難な人

④危険を知らせる情報を受け取っても,それに対して適切な行動をとることができない、または困難な人


具体的には、身体障害者、体力の衰えた高齢者、認知症患者、傷病者、安静を求められる妊婦、理解力や判断力が乏しい乳幼児や子供、日本語がわからない外国人などが該当します。社会福祉施設の利用者は、大部分が災害弱者だと考えていいでしょう。


社会福祉施設において、十分な対策がない状態で火災が発生した場合、多くの利用者が逃げ遅れるのは間違いありません。そうなれば大きな被害が発生し、尊い人命が失われ、施設の利用者は責任を問われることになるでしょう。


近年では、東日本大震災などの教訓もあり、国が指導して災害弱者への支援の強化が進められています。いざという時の被害を最小限に抑えるためにも、社会福祉施設では消防用設備の点検・設置を確実に行わなければならないのです。




■消防用設備だけでなく、消防訓練も大切です!



社会福祉施設において災害弱者を守るためには、消防用設備の設置・点検だけでなく、「消防訓練」にも力を入れる必要があります。どれだけ消防用設備をそろえても、いざ火災が発生した時に正しく使ったり避難したりできなければ、何の意味もないからです。


消防訓練は大きく分けて 3 種類あり、消防計画で定められた回数を実施する関係上、複合して実施されることもよくあります。一般的には「避難訓練」と呼ばれるケースが多いかと思いますが、厳密にいうと避難訓練は 3 種類の訓練の 1 つにすぎません。各訓練の内容をご紹介します。



・消火訓練



消火器や屋内消火栓といった設備の使い方を覚える訓練です。模擬的に使用するだけの場合もあれば、実際に使用する場合もあります。場所などの関係で、放射訓練を行うのが難しい施設では、最寄りの消防署の訓練用消火器や屋内消火栓を使って訓練をすることも可能です。



・通報訓練



119 番通報のやり方や、放送設備の使い方を覚える訓練です。内線電話を使った応答や非常ベルの操作、非常放送などのロールプレイングを行います。



・避難訓練



あらかじめ決めておいた避難経路を使い、安全な場所まで避難する訓練です。社会福祉施設の場合、スタッフは利用者の誘導や搬送も行う必要があるため、他の施設以上に重要な訓練となります。また、あわせて避難器具の使用方法なども覚えます。




■消防訓練実施までの流れ


消防訓練は所轄の消防署に相談し、計画的に行うことが大切です。そこで、実際に訓練を実施するまでの流れを確認しておきましょう。



① 消防訓練の計画を立てる



責任者である防火管理者を中心に、消防訓練の内容を決めます。設定する項目は、出火場所、出火時間、避難経路、避難場所、そして通報係・初期消火係・誘導係といった役割分担などです。本当に火災が発生した時に役立つよう、なるべく細かく設定しましょう。



②消防機関に通知



社会福祉施設は「特定用途防火対象物」に該当するため、消防訓練を実施する際はあらかじめ消防機関に連絡しておく必要があります(消防法施行規則 第 3 条第 11 項)。「消防訓練事前通知書」を作成し、所轄の消防署等に提出しましょう。


② 訓練実施



予定の日が来たら、計画通りに訓練を実施します。実際に火災が発生したと想定し、真剣に行うことが大切です。



③ 記録の作成・検証



消防訓練を実施した後は「消防訓練実施記録書」を作成し、3 年間保存する必要があります。また、避難にかかった時間や避難経路、役割分担などを検証し、改善点を見つけ出すことも大切です。さまざまな視点で訓練を振り返り、必要に応じて消防計画の見直しを行いましょう。


消防訓練の内容や必要性については、以下の記事もご覧ください。


消防訓練は消防署への届け出が必須です!訓練の内容や実施時の注意点を紹介

https://nittabousai.co.jp/blog/column/142170




■消防用設備点検には時間がかかる! 計画はお早めに


社会福祉施設において消防用設備点検や消防訓練を実施する場合、1 つ注意していただきたい重要なポイントがあります。それは、消防用設備点検には時間がかかるということです。


施設の規模にもよりますが、専門業者に連絡して翌日すぐにやってもらう、というわけにはいきません。スケジュールを調整している間に、消防署の立入検査が抜き打ちで来て、不備を指摘されてしまうというケースもあるでしょう。


また、不備が発見された場合はその箇所を是正しなければならず、やはり時間がかかります。そのため少なくとも、1 ヶ月前には専門業者に相談することが大切です。計画的に点検や訓練を実施して、災害弱者に優しい安全な施設を作りましょう。



千葉県千葉市の新田防災では、大小問わず建物の消防用設備の点検・保守を行っております。社会福祉施設での施工実績も豊富にあり、管理者様・利用者様の目線でアドバイスができ、施設の用途や規模に応じた正確な施工が可能です。さらに、各種申請の代行もお任せいただけます。消防用設備の設置・追加・点検が必要な時は、お気軽に新田防災までご相談ください。