二酸化炭素消火設備の消防法改正で基準が変更になります!

皆さんこんにちは。千葉県千葉市を拠点に、消防用設備の点検・保守、工事を手掛ける有限会社新田防災です。


二酸化炭素消火設備を原因とする事故の増加を踏まえ、令和5年4月1日から全域放出方式の二酸化炭素消火設備に係る消防法施行令の一部が改正されました。消防法を順守するためには、改正された施行令を正しく理解しておくことが必要です。


この記事では、消防法改正の詳しい内容について解説します。改正後の基準を理解し、正しく消火設備を使うようにしましょう。




■二酸化炭素消火設備とは?



二酸化炭素消火設備は、不活性ガス消火設備とも呼ばれます。火災発生時に空間を閉鎖し、空間内を二酸化炭素(消火剤)で満たすことで空気中に含まれる酸素濃度を下げ、消火するための設備です。電気室・機械式立体駐車場・圧延機・印刷機など、水や泡で消火できない設備が置かれた施設や、乾燥室・ボイラー室など火気を多量に使う施設などに設置されています。


二酸化炭素消火設備は電気絶縁性が高く、電気機器に安心して使用可能です。また、ガス化により狭い隙間にも二酸化炭素が浸透し、複雑な形状の場所でも消火できる点などが挙げられます。1961年に消防法で定められ、ガス系消火設備のうち最も古く採用されている設備です。


一方で、二酸化炭素消火設備の基準設計濃度はおよそ35%と、致死量となる30%を超えています。使い方を誤ると、意識消失を起こしたり、最悪の場合死に至るケースもあるため、使用時には十分な注意が必要です。火災発生時以外には、消火設備の操作は厳禁です。




■消防法改正で何が変わるの?



今回の消防法改正により、全域放出方式(室内全域に消火剤を放出する方式)の二酸化炭素消火設備に基準が追加されました。追加点を簡単に紹介します。


技術基準として、まず起動用ガス容器と緊急停止装置の設置が追加されました。また、自動式の起動装置では2つ以上の火災信号で起動しなくてはなりません。自動式の移動装置を設置した場合、常時人がいない施設でも音声による警報装置の設置が基準に追加されました。ここまでの設置は、令和5年4月以降の新築・増築工事で二酸化炭素消火設備が設置された場合に必要な措置です。


集合管や操作管への閉止弁設置も、新たに追加されましたが、これは令和6年3月31日までの実施が必要です。


二酸化炭素の危険性を知らせる標識の設置や、防護区域立ち入り時の閉止弁の閉止・自動手動切り替え装置の手動状態の維持も必要です。消火剤が放出された場合は、消火剤が完全に排出されるまでは防護区域に立ち入らないようにしなくてはなりません。消火設備の構造及び工事・整備・点検などにおいて必要な措置の内容や手順を記載した書類の設置も求められます。これらの措置は、消火設備をすでに設置している建物に対しても必要であり、令和5年3月31日までに実施が必要です。


また、二酸化炭素消火設備の工事・点検については、消防設備士や消防設備点検の有資格者の工事・点検が必要となります。




■法改正に至った経緯



消防法の改正に至ったのは、死亡事故の増加が原因でした。令和2年12月から令和3年4月にかけて、全域放出方式の二酸化炭素消火設備を原因とする死亡事故が相次いで発生したのです。


実際に起こった事故を紹介します。令和2年12月に、愛知県名古屋市にある機械式駐車場をメンテナンスしていたところ、消火設備の誤作動により二酸化炭素が放出し、死者1名・負傷者10名という惨事が発生しました。また、令和3年1月には東京都港区で消火設備の点検中にボンベ庫内で二酸化炭素が放出し、死者2名・負傷者1名の被害が報告されています。さらに、令和3年4月に東京都新宿区で発生した事故では、共同住宅の機械式において、何らかの理由で二酸化炭素が放出し、死者4名・負傷者2名の被害が発生しました。


これらの事故を踏まえ、令和3年5月に総務省消防庁が検討部会を設置し、事故の再発防止を目的として法改正に至りました。改正法令では、二酸化炭素消火設備に関する技術上の基準見直しが行われています。




■法改正による影響



今回の法改正によって、消防設備を設置されている建物関係者の方は、さまざまな対応が必要です。消防法改正の項で解説した内容と一部重複しますが、対応内容をさらに詳しく紹介します。



・閉止弁の設置


閉止弁とは、消防設備の点検・工事・メンテナンスなどの実施時に配管を閉じ、二酸化炭素の誤放射を防止するために設置する弁です。閉止弁が設置されていない設備には、令和6年3月31日までに設置が必要です。


閉止弁の設置場所は、防護区画外の容器ユニットにある操作管もしくは集合管です。法改正前までは、所轄消防の指導に基づく設置であり、義務化されていませんでした。今回の改正により設置が義務化されたため、必ず対応しましょう。


設置の義務化に合わせ、閉止弁の基準も一新されました。従来は性能評定品で問題ありませんでしたが、新基準では消防庁長官が定める基準に適合する認定品の設置が必要です。


防護区画に人が立ち入る場合は、閉止弁が閉止された状態にし、自動手動切り替え装置を手動状態にすることが消防法で定められました。これ以外の場合は、閉止弁が解放された状態にします。



・標識の設置


消火ボンベ庫室(二酸化炭素の貯蔵容器が置かれた部屋)や防護区画の出入り口など、二酸化炭素に触れる可能性がある場所では、二酸化炭素の危険性を注意喚起しなくてはなりません。このために、出入り口などの見やすい場所に、注意喚起のための標識を設置しなくてはなりません。


標識は、イラストと文章の2種類を用意し、二酸化炭素が人体に対し危害を及ぼす恐れがある・消火剤の放出時は、原則として消火剤が排出されるまでその場所に立ち入ってはいけないことの2点を表示する必要があります。


東京消防庁では、ガイドライン図例として以下の文章を紹介しています。


「この室は

二酸化炭素消火設備が設置されています。

消火ガスを吸い込むと死傷のおそれがあります。

消火ガスが放出された場合は入室しないこと。

室に入る場合は消火ガスが滞留していないことを

確認すること。」

(引用:https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/office_adv/co2jiko/index.html



・図書の備え付け


消火設備の点検時に取るべき措置を定めた図書を、設備の制御盤の付近に備え付けることも必要となります。図書として定められたのは、機器構成図(機器の配置や構成が把握できる資料)・系統図・防護区画および貯蔵容器を貯蔵する場所の平面図・自動手動切り替え作業時のフローチャートの4つです。


図書の備え付けにより、点検時にスムーズな対応が可能となります。



・消防設備士等による点検の実施


全域放出方式の二酸化炭素消火設備は、建物の延べ床面積に関わらず、消防設備士もしくは消防設備点検資格者を有する人物が点検をしなくてはならないと定められました。


標識の設置及び図書の備え付けは、すでに対策を取られていることと思いますが、万が一まだ対応ができていない設備があれば、早急に対応しなくてはなりません。



・容器弁の点検・交換


容器弁とは、ガス系消火設備の火剤を保管している貯蔵容器のバルブ部分のことを指します。

容器弁は長期間点検や交換をしていないと、経年劣化や腐食による誤放出や不作動の恐れがあります。

今回の法改正による変更はないですが、容器弁の点検も消防法で義務付けられています。

容器弁は設置後30年(二酸化炭素を消火剤として用いるものは25年)を経過する前の間に容器弁の安全性の点検が必要となっています。

また、貯蔵容器の交換推奨年数が17~18年ほどとなっているため、設置後15年前後で点検することが望ましいでしょう。




■機器部品の推奨交換年数とは



二酸化炭素消火設備の対策に併せて、周辺機器の交換も進めたいものです。機器ごとに推奨交換年数が定められていますが、ここでは日本消火装置工業会が定める、二酸化炭素消火設備に関係する機器の推奨交換年数を紹介します。


容器弁は、18年から20年での交換が推奨されています。制御盤は、リレー式が17年から20年・電子式は13年から15年で交換を検討しましょう。蓄電池の充電部は、13年から15年での交換が適しています。蓄電池は、鉛・ニッカドとも4年から5年で交換します。


操作箱と音声警報装置は、13年から15年で推奨交換年数を迎えます。放出表示灯と点検用閉止弁は、18年から20年での交換が必要です。


上記で紹介した推奨交換年数は目安であり、推奨交換年数に達していなくとも機器の状態によっては交換や修理が必要です。定期点検を実施するなかで、少しでも不具合や異常を感じる機器があれば、早い段階で対策を施すようにしましょう。




■まとめ


今回の消防法改正により、二酸化炭素消火設備のリニューアルが必要となる設備も多いでしょう。法令に則った対応に加え、設備の安全対策を施すうえで、推奨交換年数を目安にして更新や交換が推奨される設備もあります。


この設備が設置されている建物(駐車場など)の工事(天井張替、ペンキ塗替えなど)を行う際は、建物の防火管理者様は、消防設備士の立会をお願いして下さい。

新宿区の地下駐車場の誤放出事故では、設備士の立ち会いがなく、恐らく消火設備であることを知らずに感知器の脱着を行った結果、火災と同じ電気的回路が出来上がり、CO2の放出までいきました。

これらに関し、総務省消防庁からも注意喚起が出ております。


建物の所有者様や管理者様などには、消防設備の定期的な点検と報告の義務がございますが、消防設備の点検・保守には専門知識が必要です。改正消防法に基づいた消火設備の設置および更新・交換など、消火設備についてお問い合わせがございましたら、お気軽に新田防災までご連絡ください。


千葉県千葉市の新田防災では、大小問わず建物の消防用設備の点検・保守を行っております。ビルオーナー様や管理組合の立場に立った消防用設備設置のアドバイスを行ったり、その後の点検も豊富な実績があり、施設の用途や規模に応じた正確な施工が可能です。


建物の利用者様の安全を守るために、ここで紹介した二酸化炭素消火設備の法改正に基づいた適切な対策も、全て弊社へお任せください。周辺設備と合わせて、最適なプランをご提案いたします。


設備の設置以外に、各種防災訓練のサポートも行っております。消火訓練・避難誘導訓練・通報訓練など、建物の利用者様の安全管理のために必要不可欠な避難訓練の実施には、弊社がサポートいたしますので、お気軽にご相談ください。さらに、各種申請の代行もお任せいただけます。


消防用設備の設置・追加・点検が必要な時は、お気軽に新田防災までご相談ください。

                           2023年6月時点


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