消防署の立入検査で慌てないためのポイント ~ビルオーナー・不動産管理会社 編~  

皆さんこんにちは。

千葉県千葉市を拠点に消防用設備の点検・保守、工事を手掛ける有限会社新田防災です。


建物のオーナー様や管理会社様のもとには、ある日突然消防署から「立入検査(査察)」の通知が来ることがあります。消防署員からさまざまな質問や指摘を受け、大変な思いをしたことのある方もいるでしょう。しかも、場合によっては指摘を受けた箇所を改善し、消防署に報告しなければなりません。


立入検査の際に慌てないためには、消防法や消防用設備点検の知識を持ち、事前に準備をしておくことが大切です。今回は消防用設備の点検義務や、消防署の立入検査について詳しく解説します。




■消防法で定められた点検義務とオーナー・管理者の責任



消防署の立入検査は、簡単にいうと「消防法等の規定を守っているかどうか」を確認するために行われます。そこでまずは、消防法で定められている「消防用設備点検」と「防火対象物点検」、そして建物のオーナー・管理者の義務について知っておきましょう。



・消防用設備点検とは?



消防用設備点検は、消防法第17条の3の3で定められている点検制度です。消火器や自動火災報知設備、スプリンクラー、避難はしごといった設備の点検を行い、設置場所や機能をチェックした上で、管轄の消防署に報告する必要があります。対象となる建物は以下の3つです。


・延べ面積1,000㎡以上の特定防火対象物

・延べ面積 1,000㎡以上の非特定防火対象物で、消防長または消防署長が指定したもの

・屋内階段が1つのみの特定防火対象物


「特定防火対象物」とは、不特定多数の人が利用する建物や、火災発生時の避難が困難な建物のことです。ホテルや飲食店、病院、福祉施設などが該当します。また、「非特定防火対象物」は、出入りする人がある程度特定されている建物や、避難がそれほど困難ではない建物のことです。共同住宅や学校、工場、倉庫などが該当します。


点検をするのは誰でもいいわけではなく、「消防設備士」または「消防設備点検資格者」の有資格者でなければなりません。また、小規模な建物であっても、消防法の定めにより消防用設備を設置している場合は、やはり点検・報告の義務があります。このような建物は有資格者以外でも点検可能ですが、正確さや手続きの手間を考慮すると、有資格者に依頼するのが基本です。


そして消防用設備点検には、「機器点検」と「総合点検」の2種類があります。機器点検は、消防用設備の設置場所や外観の点検や機能チェックなどを行うもので、6ヶ月に1回実施します。総合点検は、設備を実際に稼働させて機能をチェックする点検で、実施は年に1回です。


総合点検は機器点検と同時に行うので、基本的には年2回点検を実施することになります。なお、報告の間隔は、特定防火対象物が1年に1回、非特定防火対象物が3年に1回です。



・防火対象物点検とは?



防火対象物点検は、消防法第8条の2の2で定められている点検制度です。「防火管理者を選任しているか?」「消火・通報・避難訓練を実施しているか?」「消防用設備等が設置されているか?」「避難経路周辺に避難の障害となるものが置かれていないか?」「防炎対象物品(カーテンなど)に防炎性能があるか?」といったことをチェックします。


点検の頻度は年に1回です。また、以下の条件に該当する建物に点検義務があります。


・収容人員が30人以上の建物で、特定用途部分が地階または3階以上にあり(避難階は除く)、階段が1つのもの

・特定防火対象物で、収容人員が300人以上のもの

・延べ面積 1,000㎡以上の非特定防火対象物で、消防長または消防署長が指定したもの


ちなみに、この制度が導入されたきっかけは、平成13年に新宿歌舞伎町の雑居ビルで発生した火災です。この火災は44人もの死者を出す大惨事となり、避難経路に障害物が置かれていたこと、避難訓練や消防用設備点検が適切に行われていなかったことが原因とされています。そのため、防火管理体制が適切であるかどうかを、有資格者に点検・報告させるようになったのです。



・建物のオーナーには防火管理の責任があります!



ここまで見てきた防火管理を行う責任があるのは、現場を直接管理しているテナント入居者だけではありません。ビルなどのオーナー様や管理会社様も「管理権原者」に当たるため、建物の防火管理に関して責任を負います。


つまり、建物や設備の適切な点検や報告を怠った場合、罰せられるのはオーナー様なのです。火災を防ぐ意味でも法令を守る意味でも、点検や報告は確実に行う必要があります。




■消防署の立入検査の流れとポイント



立入検査に適切に対応するためには、消防法に基づく点検の義務を理解した上で、しっかりと準備を整えておく必要があります。いつ立入検査が来ても大丈夫なように、立入検査の流れとポイントを確認しておきましょう。



・消防署の立入検査はいつ、何のために行われるの?



消防署による立入検査は、消防法第4条の定めに基づいて行われます。目的は、消防用設備の設置や建物内の状態、消防訓練の実施状況などをチェックし、消防法を守っているかどうかを確認することです。


多くの場合は事前に消防署から通知書が届き、それからおよそ2週間後に(もしくは日程を調整した上で)検査をしてもらいますが、抜き打ちで行われる場合もあります。検査の当日は、消防署員が大抵2名ほどで訪れ、共用部分を中心に必要に応じてテナント内も検査します。


検査の際は、防火管理者等の立会いが必要です。立入検査の頻度は特に決まっていませんが、雑居ビルのような火災リスクの高い建物は優先的に検査される傾向にあります。



・立入検査の検査項目



立入検査の検査項目は多岐にわたり、とても細かくチェックされます。主なチェックポイントは、「消防用設備が適切に設置されているか?」「避難経路が確保されているか? 障害になるものは置かれていないか?」「防火管理者の選任・消防計画の作成・消防訓練などが適切に実施・報告されているか?」「消防用設備点検や防火対象物点検が適切に実施・報告されているか?」などです。


外部の専門業者に防火管理者や消防用設備点検を委託している場合は、業者に立会・対応してもらうこともできます。立入検査に対応する負担が減り、より正確な対応も可能になるので、可能なら委託するのが望ましいでしょう。



・立入検査結果通知書とは?



立入検査の結果、何らかの指摘事項(不備)があった場合は、建物のオーナーに「立入検査結果通知書」が届きます。一般的に、届くのは検査から数日後です。


結果通知書には「消防用設備点検を実施して報告すること」「自動火災報知設備の不良を改修すること」「消火器を設置すること」など、不備の内容と改善方法が具体的に記載されています。指摘された箇所については、「改修(計画)報告書」を提出した上で、可能な限り速やかに改善しなければなりません。


なお、消防署はあくまでも、不備があった箇所を通知するだけです。不備がある状態を放置すると警告や命令を受けることもありますが、消防署が直接的に是正措置をとってくれるわけではありません。改善する義務があるのはオーナーや管理者です。



・改修(計画)報告書とは?



立入検査結果通知書で指摘を受けた箇所については、「改修(計画)報告書」を作成し、管轄の消防署に提出する必要があります。改修(計画)報告書には、指摘事項を改善したこと、もしくはいつまでに改善するのかということを、できる限り具体的に記載しなければなりません。期日や方法などの具体性に欠けていたり、対応が誤っていたりすると、修正を求められる場合もあります。


また千葉市では、提出期限の期日がありますので、期日には余裕をもって提出をしましょう。ただ、費用の関係ですぐに改修するのが難しい場合もありますし、改修工事をいつまでに完了できるのか自分で判断するのは困難です。具体的かつ正確な改修計画を立てるためにも、専門業者への相談をおすすめします。




■不備があった時に罰せられるのはビルオーナー、管理会社です!



改修(計画)報告書を提出しただけで終わってしまっては元も子もありません。検査で不備があったにもかかわらず対応しないと、大変なことになる可能性があります。その内容と、トラブルを防ぐためのポイントを確認しておきましょう。



・不備を改善しないと公表され、懲役刑・罰金刑のリスクも!



適切な改修を行わなかった場合、次に来るのは履行期限のある「警告」です。それにも従わないと、次は「命令」が来ます。この段階で、法令違反の状態にある建物の情報が「公示」されます。


公示とは、建物の利用者や近隣住民に対して「この建物は消防法に違反しており、火災予防上とても危険である」という情報を知らせることです。建物の出入り口は消防署の掲示板などに違反内容が掲示される他、市町村のホームページなどでも公開されます。


つまり、法令違反をしている危険な建物だということが、社会に知られてしまうのです。これは建物のイメージを大きく悪化させ、入居率の低下やバッシングなどにつながりかねません。


そして、命令にも従わずにいると消防署から「告発」され、刑事罰を受けるおそれがあります。この場合に罪を問われるのは、もちろんビルのオーナー様です。罰則の内容は、点検やメンテナンス等を行わなかった場合は、30万円以下の罰金または拘留。消防用設備等を設置しなかった場合は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金です。さらに法人が対象だと、1億円以下の罰金刑となる可能性すらあります。



・立入検査で慌てないためには



建物のオーナーまたは管理会社は、入居したテナントが消防法を遵守しているか確認する必要があります。雑居ビルといっても複数の事務所やネイルサロンや美容室だけの場合、非特定防火対象物になります。例えば、その建物の一階のテナントの入替でカフェなど飲食店が入居した場合、特定防火対象物の建物に変わります。特定防火対象物の建物に変わると、今まで設置されていた消防設備の設置義務が一気に厳しくなります。このような事を知らずにテナント募集や応募したりすると両者にとって費用負担が発生してしまう場合があります。


立入検査で不備を指摘された時は、速やかに対応しなければなりません。しかし、それよりももっと重要なことは、指導や改善命令そのものを受けないよう、日頃から適切な防火管理を行っておくことです。上記のようなトラブルを防ぐためにも、設備の設置・点検や消防訓練などを確実に実施すれば、たとえ抜き打ちで検査が来ても慌てる必要はありません。



・日頃からの防火管理が最も重要な対策です



そもそも、各種点検や消防訓練は、法令遵守のためだけでなく、テナントの入居者や建物の利用者を火災から守るために行うものです。適切な防火管理を行ってこそ、万が一の時に大切な生命や財産、そして建物を守ることができます。オーナーとしての責任を果たすためにも、しっかりと防火管理を行いましょう。不明点・疑問点がある時は、専門業者に相談してみてください。



千葉県千葉市の新田防災では、大小問わず建物の消防用設備の点検・保守を行っております。消防用設備点検や防火対象物点検、立入検査時の立会い、不備のあった箇所の改善などの実績は豊富にあります。


施設の用途や規模に応じた正確な施工ができる他、ビルのオーナー様や管理会社様の立場に立った適切なアドバイスが可能です。さらに、各種申請や報告、書類作成の代行もお任せいただけます。消防用設備の設置・追加・点検が必要な時は、お気軽に新田防災までご相談ください。