消防訓練を計画する際、「消防署に立ち会ってもらえば、必要な訓練はすべて行える」と考えていないでしょうか。
消防職員から、火災発生時の通報、初期消火、避難誘導などについて指導を受けることは、実効性の高い訓練を行ううえで非常に重要です。
一方で、建物に設置されている消火器、屋内消火栓、救助袋、緩降機などの種類や操作方法は、施設によって異なります。実際の設備を安全に展開し、操作方法や注意点まで確認するためには、その建物の消防設備を理解している消防設備業者の専門知識が役立ちます。
例えば、屋内消火栓は種類によって必要な操作人数や起動方法が異なります。救助袋についても、収納場所を確認するだけでなく、誰が展開するのか、どのような手順で使用するのか、周囲に障害物がないかまで確認しなければなりません。
消防設備の点検で「正常に作動する」と確認されていても、施設の従業員や利用者が使えるとは限りません。設備そのものが正常であることと、人が緊急時に操作できることは、別の問題だからです。
消防署と消防設備業者は、どちらか一方を選ぶ関係ではありません。消防署から火災時の総合的な対応を学び、消防設備業者から建物固有の設備の使い方を学ぶことで、より現実的で実践的な消防訓練を実施できます。
この記事では、消防署と消防設備業者の役割の違いを整理し、消防設備業者が訓練に立ち会うメリットや、依頼前に確認しておきたいポイントについて解説します。
≪目次≫
1. 消防署と消防設備業者では訓練時の役割が異なる
2. 消防設備の点検と操作訓練は同じではない
3. 消防設備業者が訓練に立ち会う5つのメリット
4. 実際に確認したい消火器・屋内消火栓・避難器具
5. 消防署と消防設備業者が連携する訓練の進め方
6. まとめ|建物にある設備を「実際に使える備え」に変える
1. 消防署と消防設備業者では訓練時の役割が異なる

—消防署は火災時の初動対応全体を指導する
消防訓練を実施する際、まず相談先として思い浮かぶのが、建物を管轄する消防署です。
消防署では、119番通報、初期消火、避難誘導、消防隊への情報提供など、火災発生時に必要となる一連の自衛消防活動について相談できます。
東京消防庁は、消防訓練の内容として、消火器や屋内消火栓を使う消火訓練、避難経路や避難器具を確認する避難訓練、119番通報や放送設備の使い方を確認する通報訓練などを案内しています。また、実際の119番回線を使用する通報訓練を行う場合は、事前に消防署へ相談し、消防職員の立ち会いのもとで実施する必要があります。
消防署へ相談する大きなメリットは、火災発生時の対応を総合的に確認できることです。
火災を発見した後、誰が通報し、誰が初期消火を行い、誰が避難誘導を担当するのか。消防隊が到着した際に、火元や逃げ遅れた人の情報をどのように伝えるのか。
こうした建物全体の自衛消防活動を確認するうえで、消防署から受ける助言や指導は重要です。
—消防設備業者は建物に設置された設備を専門的に確認する
一方、消防設備業者は、建物に実際に設置されている消防設備の工事、整備、点検などを専門としています。
消防設備士には甲種と乙種があり、甲種消防設備士は対象となる消防用設備の工事・整備・点検を行うことができ、乙種消防設備士は整備・点検を行うことができます。また、消防設備の点検には専門的な技術や器具が必要となるため、東京消防庁も消防設備士や消防設備点検資格者による点検を推奨しています。
建物に設置される消防設備は、どの施設でも同じではありません。
消火器の種類や本数、屋内消火栓の方式、自動火災報知設備の受信機、非常放送設備、救助袋や緩降機など、建物の用途・構造・規模によって設備の構成は異なります。
そのため、実務上は、日頃からその建物の設備を点検・整備している消防設備業者が訓練に立ち会うことで、次のような確認を行いやすくなります。
・設置されている消防設備の種類
・消火器や屋内消火栓の具体的な操作手順
・自動火災報知設備が作動した際の確認場所
・救助袋や緩降機の収納場所と展開方法
・点検時に確認された設備上の注意点
・設備の前や避難経路上に障害物がないか
・誤操作や事故を防ぐための注意事項
消防設備業者は消防署の代わりをする存在ではありません。
建物に設置された設備の構造や状態を踏まえ、施設の職員が安全に操作できるよう支援する役割を担います。
—「火災への対応」と「設備の操作」を分けて考える
消防署と消防設備業者の違いは、訓練を「ソフト」と「ハード」の2つに分けると理解しやすくなります。
ソフト面とは?
火災を発見した後の役割分担、通報、初期消火、避難誘導、消防隊への情報提供など、人や組織の動きです。
ハード面とは?
消火器、屋内消火栓、自動火災報知設備、非常放送設備、避難器具など、建物に設置された設備です。
消防署は、主に火災時の自衛消防活動全体について助言や指導を行います。一方、消防設備業者は、建物固有の消防設備について、構造・操作・点検状態を踏まえた説明を行うことで訓練を補完できます。
どちらか一方だけで十分と考えるのではなく、それぞれの専門性を組み合わせることが重要です。
—消防署と設備業者の連携で訓練の実効性が高まる
例えば、消防署の指導を受けながら火災発生後の通報・初期消火・避難誘導を確認し、その後、消防設備業者の説明を受けながら、実際に設置されている屋内消火栓や救助袋の位置と操作方法を確認する方法があります。
このように進めることで、訓練参加者は「火災時に何をするのか」だけでなく、「そのために建物のどの設備を、どのように使うのか」まで理解できます。
東京消防庁が示す消防訓練でも、座学や動画で活動要領を確認するだけでなく、実際に建物内の消火器の位置や避難経路を確認する方法が例示されています。
消防訓練の目的は、専門家から説明を聞いて終わることではありません。
消防署による火災対応全体の指導と、消防設備業者による建物固有の設備確認を組み合わせ、施設の職員自身が実際に動ける状態をつくることが重要です。
2. 消防設備の点検と操作訓練は同じではない

—消防設備点検は「設備が正常に作動するか」を確認するもの
消防用設備等の点検は、消火器、スプリンクラー設備、自動火災報知設備、屋内消火栓設備などが、火災時に正常に作動する状態に保たれているかを確認するためのものです。
消防設備が必要なときに作動しなければ、人命や建物に重大な影響を及ぼす可能性があります。そのため、消防法では、建物の関係者に消防用設備等を定期的に点検し、その結果を管轄する消防署へ報告することを求めています。
点検では、設備の種類に応じて、外観に異常がないか、必要な場所に設置されているか、機器が作動するか、機能が基準を満たしているかなどを確認します。
つまり、消防設備点検の主な対象は「設備」です。
点検結果に異常がなかったことは、その設備が一定の基準に従って維持されていることを示します。しかし、建物で働く人全員が、その設備の場所や操作方法を理解していることまで証明するものではありません。
—操作訓練は「人が設備を使えるか」を確認するもの
消防設備の操作訓練では、建物の職員や従業員が、実際の火災を想定して設備を使用できるかを確認します。
例えば、消火器の訓練では、消火器まで移動し、安全栓を抜き、ホースを火元へ向け、レバーを握るという一連の操作を経験します。
屋内消火栓では、設備の種類に応じて、起動操作、ホースの延長、筒先の保持、放水までの手順を確認します。救助袋などの避難器具では、収納場所、展開方法、地上側の安全確認、避難者の誘導方法などを確認する必要があります。
東京消防庁は初期消火訓練について、操作人員や号令などの形式よりも、参加者が資器材を扱えるようになることを優先し、可能な限り一部の操作だけでなく、すべての操作過程を習得できるよう指導することが効果的だとしています。
操作訓練の対象は、設備そのものではなく「設備を使う人」です。
点検で設備が正常と判断されていても、使用する人が操作に迷えば、火災時に設備の機能を十分に生かせない可能性があります。
—「作動する」と「使える」の間には差がある
消防設備を考える際には、次の2つを分ける必要があります。
設備が正常に作動する状態である
施設の職員が緊急時に設備を操作できる
例えば、自動火災報知設備が正常に作動しても、受信機に表示された区域を確認する方法が分からなければ、火災が発生した場所の特定に時間がかかる可能性があります。
屋内消火栓が正常でも、起動方法やホースの扱い方が分からなければ、初期消火を開始できません。
救助袋が点検上正常でも、収納場所を知っている人が限られていたり、展開方法を確認していなかったりすれば、緊急時にすぐ使用できるとは限りません。
消防設備が正常に作動することは、火災への備えとして不可欠です。しかし、設備の機能を人命保護につなげるには、その設備を使用する人の知識と経験も必要になります。
—点検時の説明だけでは操作経験にならない
消防設備点検の際、設備業者から不具合や設備の状態について説明を受けることがあります。
ただし、説明を聞き、設備の場所を確認することと、自分で一連の操作を行うことは同じではありません。
実際に操作してみると、次のような課題が見つかる場合があります。
消火器までの通路に荷物が置かれている
屋内消火栓の扉を開けにくい
ホースをどの方向へ延ばすか分からない
非常放送設備のマイク操作に迷う
救助袋の収納場所が分かりにくい
設備を操作する人と避難誘導する人の分担が曖昧
こうした課題は、設備単体の作動確認だけでは発見しにくいものです。
消防設備点検の日に簡単な説明を受けるだけで終わらせず、別途、施設の職員が主体となって操作する訓練を計画する必要があります。
—点検と訓練の結果を相互に反映させる
消防設備点検と操作訓練は、どちらか一方を実施すればよいものではありません。
両者を連動させることで、より実効性のある防火管理につながります。
例えば、点検で設備の場所や操作上の注意点を確認し、その内容を次回の消防訓練に取り入れます。訓練中に「設備の表示が分かりにくい」「操作場所まで移動しにくい」といった問題が見つかった場合は、設備業者へ相談し、表示や周辺環境を改善します。
このように、点検で設備の状態を確認し、訓練で人の行動を確認し、それぞれの結果を次の改善へ反映させることが重要です。
消防設備点検は、設備が火災時に働くための備えです。
操作訓練は、その設備を人が使い、命を守る行動へつなげるための備えです。
この2つを分けて考えたうえで、両方を継続的に実施することが、消防設備を「設置されている設備」から「実際に使える設備」へ変えることにつながります。
3. 消防設備業者が訓練に立ち会う5つのメリット

消防設備業者が消防訓練に立ち会う最大の価値は、一般的な設備の説明ではなく、その建物に実際に設置されている消防設備を基に訓練できることです。
消防設備の種類や配置は、建物の用途、規模、構造によって異なります。
インターネット上の動画や一般的な訓練資料だけでは、自社の建物にある設備と操作方法が一致しないこともあります。
ここでは、消防設備業者が訓練に立ち会うことで得られる、5つの実務的なメリットを解説します。
—メリット1.建物に設置されている設備を正確に確認できる
消防設備業者が立ち会うことで、施設に設置されている消防設備の種類、場所、操作方法を、現物を見ながら確認できます。
例えば、同じ屋内消火栓でも、一般的な1号消火栓、易操作性1号消火栓、2号消火栓などでは、操作方法や想定される操作人数が異なります。
救助袋についても、斜降式と垂直式では展開方法が異なります。
消防設備業者へ相談することで、次のような建物固有の情報を整理できます。
どの種類の消防設備があるか
どのフロアに設置されているか
どの設備を職員が操作する可能性があるか
操作時に注意すべき部分はどこか
点検時に把握している施設特有の注意事項
設備の説明書や鍵がどこに保管されているか
「消防設備の使い方」という一般論ではなく、「この建物の、この設備をどう使うか」まで具体化できる点が大きなメリットです。
—メリット2.操作の一部分ではなく一連の流れを確認できる
消防設備は、操作の一部分だけを覚えても、緊急時に使用できない可能性があります。
屋内消火栓の場合、扉を開ける、ノズルを取り出す、開閉弁を操作する、ホースを延ばす、放水するといった一連の手順があります。
斜降式救助袋にも、収納部分を開け、地上側と連携しながら袋を降ろし、金具やロープを固定して展張するまでの複数の工程があります。
東京消防庁の訓練指導資料でも、一連の操作を最初に見本として示し、できる限り参加者全員が一部分だけでなく、すべての操作過程を習得することが効果的とされています。
消防設備業者が立ち会えば、参加者が途中で迷った際に、その場で正しい操作へ修正できます。
—メリット3.危険な操作や設備の誤使用を防ぎやすい
消防設備の中には、水圧、重量、可動部分、高所での作業などを伴うものがあります。
例えば、屋内消火栓の放水では、水圧によってホースやノズルを保持できなくなる危険があります。救助袋の展開では、窓の周囲や地上側の安全確認が必要です。
自己流で操作すると、設備を破損させたり、訓練参加者がけがをしたりする可能性があります。
消防設備業者が立ち会うことで、次の点を確認しながら訓練できます。
操作前に確認すべき安全条件
設備に適した操作人数
力をかける場所や方向
操作してはいけない部分
訓練用と実災害時で異なる取り扱い
設備の復旧や収納方法
なお、実際の消火栓等を使用する訓練では、管轄消防署への事前相談や届出、消防職員の立ち会いが必要になる場合があります。東京消防庁の訓練資料でも、消火栓等を使用する訓練について、事前の届出と消防職員の立ち会いを求めています。訓練前には、所在地を管轄する消防署へ確認することが必要です。
—メリット4.消防設備点検の結果を訓練へ反映できる
消防設備業者が日頃から点検を担当している場合、設備の状態や施設ごとの注意点を踏まえて訓練内容を検討できます。
総務省消防庁は、消火器具、屋内消火栓設備、自動火災報知設備、避難器具など、設備の種類ごとに点検基準、点検要領、点検票を定めています。
ただし、点検で設備が正常であることと、職員が設備を使えることは別の問題です。
点検結果を訓練に反映することで、例えば次のような確認ができます。
点検で確認した設備の場所を職員が把握しているか
改修した設備の操作方法が周知されているか
新しく設置した設備までの動線に問題がないか
点検時に指摘された周辺環境が改善されているか
設備更新後も古い操作方法で認識していないか
点検と訓練を別々の業務として終わらせず、設備の状態と人の対応力を一緒に確認できる点は、消防設備業者が立ち会う大きなメリットです。
—メリット5.施設ごとの改善点を具体化できる
一般的な訓練では、「もっと迅速に避難しましょう」「役割分担を確認しましょう」といった抽象的な振り返りで終わることがあります。
消防設備業者が立ち会えば、設備の操作や配置を踏まえて、より具体的な改善点を整理できます。
例えば、次のような改善です。
消火器の前に物を置かない
屋内消火栓の担当者を複数決める
自動火災報知設備の受信機を確認できる職員を増やす
救助袋の上階担当と地上担当を決める
設備の場所を写真付きでマニュアルへ記載する
新入社員や異動者向けに設備説明を行う
次回訓練では使用できない避難経路を設定する
消防訓練は、一度実施して完了するものではありません。
東京消防庁も、訓練を通じて消防計画どおりに対応できるかを検証し、必要に応じて消防計画を修正して、実効性を維持することが重要だとしています。
消防設備業者が訓練に立ち会うことで、設備の操作説明だけでなく、次回までに何を改善すべきかを、施設ごとの具体的な行動へ落とし込みやすくなります。
消防署から火災時の総合的な対応について指導を受け、消防設備業者から建物固有の設備について説明を受ける。
両者の専門性を組み合わせることで、消防訓練を「参加する行事」から「実際に設備を使える状態をつくる機会」へ変えることができます。
4. 実際に確認したい消火器・屋内消火栓・避難器具

消防設備業者が立ち会う訓練では、消防設備の名称や役割を説明するだけでなく、建物に設置されている設備を使うまでの流れを確認することが重要です。
設備ごとに操作方法は異なりますが、訓練では共通して、次の4点を確認します。
1. どこにあるか
2. どのように作動させるか
3. 誰が操作するか
4. どのような場合に使用を中止するか
この4点を、消火器、屋内消火栓、避難器具ごとに整理します。
—消火器は「三つの操作」と安全な消火方法を確認する
一般的な消火器の基本操作は、次の三つです。
1. 安全栓を引き抜く
2. ホースを外して火元へ向ける
3. レバーを強く握る
総務省消防庁も、この三つを消火器の基本的な操作として案内しています。
ただし、操作手順を暗記するだけでは十分ではありません。
訓練では、実際の設置場所から消火器を持ち出し、火元に見立てた場所まで移動するところから確認します。
消火器の前に物が置かれていないか
本体を持って安全に移動できるか
安全栓を抜く前に火元まで近づいていないか
ホースの先端を確実に持てるか
炎ではなく、燃えている物へ消火剤を向けられるか
背後に避難経路を確保しているか
消火器による初期消火は、炎が天井付近まで達する前が一つの目安です。炎が拡大している場合や、煙や熱で危険を感じた場合は、無理に消火を続けず避難します。
訓練用消火器を使用すれば、設備を汚損せずに基本操作を体験できます。実際の消火器を放射する場合は、事前に消防署や設備業者へ相談し、安全な場所と管理体制を整える必要があります。
—屋内消火栓は種類と操作人数を確認する
屋内消火栓には、1号消火栓、易操作性1号消火栓、2号消火栓などがあります。
東京消防庁の資料では、一般的な1号消火栓は2人以上での操作を想定し、易操作性1号消火栓や2号消火栓は1人でも操作できる構造として説明されています。
そのため、訓練を始める前に、自社の建物にどの種類が設置されているか確認しなければなりません。
一般的な1号消火栓では、次のような流れで操作します。
1. 使用する消火栓を選ぶ
2. 起動ボタンを押す
3. 扉を開ける
4. ホースを延ばす
5. 開閉バルブを開く
6. 放水する
起動ボタンが消火栓の内部にある場合など、設備によって細かな構造は異なります。易操作性1号消火栓や2号消火栓では、ノズルに付いた開閉弁を操作するものもあります。
訓練では、次の点を確認します。
消火栓の種類
起動ボタンの位置
ホースを延ばす方向
ホースが家具や角に引っ掛からないか
ノズルを誰が保持するか
バルブを誰が操作するか
放水開始の合図をどう伝えるか
使用後に誰が設備を復旧するか
屋内消火栓は水圧がかかるため、自己判断で実放水を行うのは危険です。東京消防庁管内では、消火栓などを使用した訓練は事前の届出と消防職員の立ち会いが必要とされています。地域によって手続きが異なる可能性があるため、訓練前に管轄消防署へ確認してください。
— 救助袋は種類と上下の連携を確認する
救助袋には、袋を斜めに展張する斜降式と、垂直に降下する垂直式があります。種類によって設定方法や降下方法が異なります。
斜降式救助袋では、上階から地上の担当者へロープを降ろし、上下で連携しながら袋を展張します。
そのため、訓練では設備の場所だけでなく、次の内容を確認します。
救助袋を使えない場合の代替避難方法救
収納部分の開け方
救助袋の種類
上階と地上側の担当者
袋を降ろす場所の安全
固定金具や展張ロープの扱い
避難者を入口へ誘導する方法
降下した人を安全な場所へ移動させる方法
救助袋を使えない場合の代替避難方法
東京消防庁は、避難器具を操作する際には、操作方法を十分に理解することや、窓枠・壁・手すりへの接触を避けること、訓練時には長袖、長ズボン、運動靴、手袋を着用することなどを示しています。
安全管理のため、初回から参加者を実際に降下させるのではなく、まずは消防設備業者の指導のもとで展開と収納、役割分担を確認する方法も考えられます。
—自動火災報知設備や非常放送設備も確認する
消火器や避難器具に注目が集まりやすい一方、自動火災報知設備や非常放送設備も、初動対応を支える重要な設備です。
訓練では、次の点を確認します。
受信機が設置されている場所
発報した区域の表示方法
火災確認後に館内へ伝える手順
非常放送設備のマイクと操作盤
放送が聞こえにくい場所
誤報だった場合の復旧を誰へ依頼するか
消防設備業者や管理会社の緊急連絡先
受信機の復旧や設備の停止を自己判断で行うと、火災の確認や消防隊の活動へ影響する可能性があります。実際の設備を操作する範囲は、設備業者や管轄消防署と事前に決めておくことが重要です。
—「設備別確認シート」を作ると訓練を継続しやすい
消防訓練を一度限りの説明会にしないためには、設備ごとの確認結果を記録します。
例えば、次の項目を設備別に整理します。
設備名と設置場所
操作できる担当者
代理担当者
基本的な操作手順
訓練で迷った操作
周辺にあった障害物
安全面の注意点
次回までに改善する内容
設備業者へ確認する内容
消防設備業者が訓練に立ち会う価値は、設備を一度見せてもらうことではありません。
その建物に設置された設備について、場所・操作・担当者・使用限界を具体化し、次回以降も職員自身で確認できる状態をつくることにあります。
5. 消防署と消防設備業者が連携する訓練の進め方

消防署と消防設備業者が連携する消防訓練では、それぞれに同じことを依頼するのではなく、役割を整理したうえで訓練内容を組み立てることが重要です。
消防署には、火災発生時の通報、初期消火、避難誘導、消防隊への情報提供など、自衛消防活動全体について相談できます。
消防設備業者には、その建物に設置されている消火器、屋内消火栓、自動火災報知設備、非常放送設備、救助袋などの種類や操作上の注意点について相談できます。
両者の専門性を組み合わせることで、「火災時に何をするか」と「建物の設備をどう使うか」を一つの訓練として確認できます。
—手順1.施設側で訓練の目的を決める
最初に、今回の消防訓練で何を確認したいのかを決めます。
目的が曖昧なまま消防署や設備業者へ相談すると、一般的な避難訓練や設備説明だけで終わる可能性があります。
例えば、次のように目的を具体化します。
新入社員に消防設備の場所を覚えてもらう
屋内消火栓の操作方法を確認する
救助袋を実際に展開する
夜間の少人数体制で避難誘導できるか確認する
来客を含めた点呼方法を見直す
通報から消防隊への情報提供までを通して行う
点検で確認した設備上の注意点を職員へ共有する
目的を一つか二つに絞ると、参加者にも訓練の狙いが伝わりやすくなります。
— 手順2.消防設備業者と建物の設備を確認する
次に、消防設備業者と訓練対象となる設備を確認します。
確認しておきたいのは、設備の名称だけではありません。
設備の種類
設置場所
基本的な操作手順
操作に必要な人数
訓練で実際に操作できる範囲
作動させた後の復旧方法
安全管理上の注意点
点検時に確認されている施設固有の事項
屋内消火栓の実放水や救助袋の展開などは、設備や施設の状況によって、安全管理や事前準備が必要です。
訓練当日に初めて設備の種類や操作方法を確認するのではなく、消防設備業者と事前に現場を確認しておくことで、訓練を安全に進めやすくなります。
—手順3.管轄消防署へ事前に相談する
消防訓練の実施方法や事前手続きは、施設の所在地を管轄する消防本部・消防署へ確認します。
東京消防庁管内では、防火管理者等が自衛消防訓練を実施する際、事前に管轄消防署へ連絡するための自衛消防訓練通知書が用意されています。また、訓練用資器材の借用や消防職員の立ち会いを希望する場合は、電子申請ではなく、管轄消防署へ直接相談するよう案内されています。
地域によって、届出方法、提出時期、消防職員の立ち会い、訓練用資器材の貸出条件などは異なる可能性があります。
特に次の訓練を検討している場合は、早めに相談しましょう。
実際の119番回線を使用する
屋内消火栓などで実放水する
煙を発生させる訓練を行う
消防車両の派遣や消防職員の立ち会いを依頼する
多数の利用者や児童が参加する
救助袋などの避難器具を展開する
消防署への相談は、消防設備業者へ任せきりにするのではなく、防火管理者や施設管理者が訓練の責任者として行うことが基本です。
—手順4.消防署と設備業者の担当範囲を明確にする
訓練前には、誰がどの説明や指導を行うのかを整理します。
一例として、次のような分担が考えられます。
≪消防署へ相談する内容≫
119番通報の方法
火災発生時の初動対応
初期消火を中止する判断
避難誘導の考え方
消防隊到着時の情報提供
自衛消防隊の動きに対する助言
≪消防設備業者へ相談する内容≫
建物に設置された設備の種類
消火器や屋内消火栓の操作方法
自動火災報知設備の確認方法
非常放送設備の操作上の注意
救助袋などの避難器具の展開方法
点検結果を踏まえた設備上の注意点
訓練後の設備の復旧や収納
これは法令上、一律に決められた分担ではなく、訓練を実施しやすくするための実務上の整理例です。
消防署、消防設備業者、施設側で事前に内容を共有し、説明が重複したり、必要な確認が抜けたりしないようにします。
—手順5.施設の職員が主体となって操作する
消防署や消防設備業者に立ち会ってもらっても、専門家がすべての操作を行ってしまうと、施設の職員には操作経験が残りません。
最初に専門家が見本を示し、その後は職員自身が操作する流れを作ります。
例えば、屋内消火栓の訓練では、職員が次の操作を行います。
消火栓の場所まで移動する
扉を開ける
起動方法を確認する
ホースを延ばす
操作担当者同士で合図する
使用後の復旧方法を確認する
設備業者は、危険な操作を防ぎ、誤りがあればその場で修正します。
消防署には、設備操作だけでなく、その間に通報や避難誘導が止まっていないか、自衛消防活動全体を確認してもらう方法があります。
—手順6.訓練後に三者で課題を整理する
訓練後は、施設側、消防署、消防設備業者のそれぞれの視点から課題を整理します。
施設側からは、実際に動いた職員が感じた操作上の迷いや情報伝達の問題を出します。
消防署からは、通報、初期消火、避難誘導、消防隊への情報提供など、自衛消防活動全体について助言を受けます。
消防設備業者からは、設備の操作、設置環境、安全性、周知方法などについて改善案を受けます。
課題は、次のように分類すると改善しやすくなります。
人の役割に関する課題
情報伝達に関する課題
避難経路に関する課題
消防設備の操作に関する課題
設備周辺の整理や表示に関する課題
消防計画やマニュアルに関する課題
訓練結果は、次回の訓練内容や自衛消防隊の編成へ反映します。東京消防庁も、自衛消防訓練の結果を記録し、次回の訓練や体制の検討・改善に活用することを示しています。
消防署と消防設備業者が連携する訓練の目的は、専門家に任せて安心することではありません。
専門家の知識を活用しながら、最終的には施設で働く人自身が、火災を発見し、通報し、設備を操作し、安全に避難誘導できる状態をつくることです。
6. まとめ|建物にある設備を「実際に使える備え」に変える

消防署と消防設備業者は、消防訓練において異なる専門性を持っています。
消防署には、119番通報、初期消火、避難誘導、消防隊への情報提供など、火災発生時の自衛消防活動全体について相談できます。
一方、消防設備業者は、その建物に実際に設置されている消火器、屋内消火栓、自動火災報知設備、非常放送設備、救助袋などについて、種類や操作方法、設備上の注意点を説明できます。
消防署と消防設備業者は、どちらか一方を選ぶ関係ではありません。
それぞれの専門性を組み合わせることで、次の内容を一つの消防訓練で確認しやすくなります。
火災を発見してから119番通報するまでの流れ
初期消火と避難誘導の役割分担
消防隊へ伝えるべき情報
建物に設置されている消防設備の種類
消火器や屋内消火栓の操作方法
自動火災報知設備や非常放送設備の確認方法
救助袋などの避難器具の展開方法
設備を使用できない場合の判断
訓練後に改善すべき設備・運用上の課題
消防設備の定期点検で異常がないことと、施設の職員が火災時に設備を使えることは同じではありません。
点検は、主に設備が正常に作動する状態かを確認するものです。操作訓練は、設備を使う人が場所や手順を理解し、緊急時に行動できるかを確認するものです。
消防設備業者が訓練に立ち会うことで、一般的な説明ではなく、「この建物のどこに、どの設備があり、誰が、どのように使うのか」を具体化できます。
訓練を計画する際は、次の手順で進めると効果的です。
1. 施設側で消防訓練の目的を決める
2. 消防設備業者と対象設備を確認する
3. 管轄消防署へ必要な手続きや訓練方法を相談する
4. 消防署と消防設備業者の担当範囲を整理する
5. 専門家の説明後に施設の職員自身が操作する
6. 訓練後に課題を整理し、消防計画や次回訓練へ反映する
有限会社新田防災では、消防設備の点検・工事だけでなく、施設に設置されている設備を活用した消防訓練についてもご相談を承っています。
「消防訓練で何をすればよいか分からない」「毎回、避難と点呼だけで終わっている」「屋内消火栓や救助袋を操作したことがない」という場合は、建物の設備を確認したうえで、訓練内容を組み立てることが大切です。
消防設備を「設置されているだけの設備」から、「施設で働く人が実際に使える備え」へ変えることが、消防設備業者と実践訓練を行う大きな目的です。

